愛犬ダンクの死

16日に御在所岳から帰るとダンクはぐったりしていた。目はしっかりしている。
足をピーンと伸ばしたり首を上げて起き上がろうとする。
「ダンク。」わたしの呼びかけに答え尻尾を振る。
耳も少し動かす。私の声が聞き取れたらしい。
「ありがとう。ダンク。もういいよ。天国へ行っても。楽になるからね。」
最後の力を振り絞って私の掌に足を押し付けた。
「うん、もう行くよ。」とでもいうように。
空高く飛び立つような姿勢で・・・
そして心臓が止まった。私の掌で足の力が抜けて行った。
安らかな最後だった。寝ているような顔だった。
私の声を聞いて安心したのか、家に帰ってわずか15分程の出来事。
丸で私が帰るのを待っていたようだった。
朝から傍にいてくれた下の子供とダンクの体をなでながら二人でぽろぽろ涙を流した。
「ダンクがいたから楽しかったよ。」
「ダンクもこの家にいて幸せだったよ。」
掌でキュンキュンないていた怖がりの子犬。
もらわれてきたあの日が昨日のことの様に思い出された。

 人間なら100歳を越えているらしい。この2ヶ月ほどほとんど寝てばかり。
近くに行っても気付かない。
先月31日に何も食べないので獣医さんで点滴。血圧が低いらしい。
「高齢ですからね。」
その後少し回復。1週間は好物のウインナや菓子パンを食べる。
最後の一週間は何も食べない。水だけで命をつないでいた。
目元はしっかりしている。ぼんやりして動作がゆっくり。足がフラフラ。
抱いたら以前の体重の半分ほどになっていた。
体をさすってやりながら涙が出てきた。「こんなに軽くなって・・・」
カット綿で水を口に含ませる。呼吸は普通で苦しそうじゃない。でも起き上がれない。

なくなる前日の金曜日。もう横になったまま。夕方寂しそうにきゅんきゅんなく。
それが最後のなき声だった。
16日の朝も寝たまま。そして私の帰りを待って4時15分に息を引き取った。
老衰だった。
15年間家族だったダンク。いつも傍にいてくれたダンク。ありがとうダンク。