夏の終わりに「アサギマダラ」を思う。



                 

2005年8月27日 くもりのち晴れ

朝、麓では山から降りたアキアカネがスイスイ。
昨日の風で吹き飛ばされたミズナラのドングリが登山道に。「小さい秋みーつけた。」
空気が乾いてとても爽やか。もう額から汗が流れることもない。
尾根からは刈り取り前の田んぼが黄金色に染まって美しいパッチワーク模様。


今日お会いしたK町のIさん。
山はまだ始めたばかりといわれるのに、すでに望湖台のあの白い尾根を知って見えた。
私はやっと今年Tさんに連れて行ってもらって知ったばかりなのに・・・。
もう一つ渡りをする蝶「アサギマダラ」の事をよくご存知。
初めてこの蝶の事を話せる人に会った。今まで誰一人この蝶に感心のある人に出会わなかった。「蝶がどうしたの?」といわんばかり・・・。



             


Iさんによると日本で産卵して蝶になるらしい。だったらツバメと一緒だ。
という事はもう今年もこの御在所岳のどこかでアサギマダラは卵を産みつけ育ちそして渡って行ったのだろうか。親子ともども?それとも子供だけ?
卵を産みつけた親は、川を遡上する「鮭」のように死ぬのかな?
それとも数年生きるのかな?
ヨツバヒヨドリの香りが好きらしい。
そういえばケルン横のお花畑にいつもとまっていた。
私が今年見たアサギマダラは御在所岳で孵った蝶なのだろうか?
それとも渡ってきた蝶?
あの独特の飛び方。ハンカチが風に舞うようななんか頼りないというか軽いというか・・・。
あの飛び方でどうやって海を渡るのだろう。
その間食べる物は?水は?何日くらい飛ぶのだろう。どこへ渡るの?
そもそもなぜ渡るのだろう?日本の冬は寒いから?
それにいつも群れを見たことないけど単独で渡るの?
海岸で群れるらしいけど・・・。
そして2000キロの海を渡るとか・・・。


ますます疑問ばかりが頭の中を駆け巡る。
アサギマダラへの思いが余計募ってきた。


今日の山はもうセミの鳴き声もない。そのアサギマダラもいない。アキアカネも少ない。夏は終わった・・・。
風が違う。とても爽やか。これは確かに秋の風。


望湖台。
その涼やかな秋風を全身で感じる。気持ちいい。特等席の岩の上で・・・。
ツツジが咲いてススキがあちこちになびいて、山はすっかり秋。
それにしても風で季節の移り変わりを知るなんてとても趣がある。
今、夏から秋へ季節の移ろいの中にある御在所岳だった。


里では葛の花が咲き出した。あの濃い紫の花。ここではツクツクボウシも鳴いている。
さらに草むらからは虫の声。鈴虫の透き通るような声「りんりん。」と。クツワムシの「がちゃがちゃ。」の声も賑やか。
どの虫もやはり「今が全て。」と競って鳴いている。命を燃やしている。秋の虫の大饗宴。
昼間、山で風になびくススキに「秋」を感じ、里で「夏」の名残のセミの声を聞く。さらに夕方「秋」の虫の音に耳を傾ける。
なんて風流な季節なんでしょう。


この夏、出会った人、山、その時出会った花や虫。その感動が鮮やかに蘇る。


過ぎ行く夏を惜しむように泣く虫の音がなぜかより心に深く沁みいる。
季節は秋へ。